数学的基礎知識

ここではPMSMの制御理論に密接に関連する数学的基礎知識を説明する。
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微分演算子とラプラス変換

f(t)f(t)のラプラス変換をF(s)F(s)とするとき、 f(t)f(t)に作用する微分演算子ddt\frac{d}{dt}は、F(s)F(s)ssの積に対応する。

f(t)ddtddtf(t)LLF(s)ssF(s)\begin{CD} f(t) @>\frac{d}{dt}>> \frac{d}{dt}f(t) \\ @V\mathcal{L}VV @VV\mathcal{L}V \\ F(s) @>s>> sF(s) \end{CD}

以後、特別な理由が無い限りddt\frac{d}{dt}ssと表記する。
混在するが、作用する関数の引数や定義域を考えれば両者の区別は自明となる。

2次元実数空間と複素数の対応

I=(1001)\bm{I}= \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{pmatrix}
J=(0110)\bm{J}= \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \\ \end{pmatrix}

と定義する。 複素数x+jyCx+jy \in \mathbb{C}に対して、行列(xyyx){xI+yJx,yR}\begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \\ \end{pmatrix} \in \{xI+yJ | x,y\in \mathbb{R} \}を対応させる。

この対応をϕ\phiとすれば、ϕ\phiC\mathbb{C}から{xI+yJx,yR}\{xI+yJ | x,y\in \mathbb{R} \}への1対1かつ上への写像(全単射)となる。

###証明 線形写像の性質を利用するため、ϕ\phiが線形写像であることを証明する。 z=x+jyz=x+jyとし、az=ax+jayaz=ax+jayであるから、

ϕ(az)=(axayayax)=aϕ(z)\phi(az)=\begin{pmatrix} ax & -ay \\ ay & ax \\ \end{pmatrix} =a\phi(z)
ϕ(z+w)=(xz+xw(yz+yw)(yz+yw)xz+xw)=ϕ(z)+ϕ(w)\phi(z+w)=\begin{pmatrix} x_z + x_w & -(y_z + y_w) \\ (y_z + y_w) & x_z + x_w \\ \end{pmatrix} =\phi(z) + \phi(w)

よってϕ\phiが線形写像。 一方で、ϕ(z)=0\phi(z)=0ならば、z=0z=0である。ϕ(z)=ϕ(w)\phi(z)=\phi(w)ならば、線形写像であるから、

0=ϕ(z)ϕ(w)=ϕ(zw)0=\phi(z)-\phi(w)=\phi(z-w)

よりz=wz=wとなり、1対1である。(1対1であることの証明完了。) また、任意の{xI+yJx,yR}\{xI+yJ | x,y\in \mathbb{R} \}に対して z=x+jyz=x+jyϕ\phiによってうつることより、上への写像となる。\square

これより、線形写像であったϕ\phiは全単射でもあるため、ϕ\phiは線形同型写像となる。 よってC\mathbb{C}{xI+yJx,yR}\{xI+yJ | x,y\in \mathbb{R} \}は同型である。(C{xI+yJx,yR}\mathbb{C}\cong\{xI+yJ | x,y\in \mathbb{R} \})

この同型対応を利用すれば、複素数における和や積が、行列における和や積に対応する。

R2AxI+yJBR2Czx+jywC\begin{CD} \mathbb{R}^2 \ni A @>x\bm{I}+y\bm{J}>> B \in \mathbb{R}^2\\ @VVV @VVV \\ \mathbb{C} \ni z @>x + jy>> w \in \mathbb{C} \end{CD}

モータ制御に頻出するI\bm{I}J\bm{J}による演算は、複素数に置き換えて演算しても問題ない。

(cosθsinθsinθcosθ)s(xy)ejθsz\begin{pmatrix} \cos \theta & - \sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{pmatrix} s \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix} \rightarrow e^{j\theta}sz
ejθsz=sejθz+jωejθze^{j\theta}sz = se^{j\theta}z + j\omega e^{j\theta}z
sejθz+jωejθz(sI+ωJ)(cosθsinθsinθcosθ)(xy)se^{j\theta}z + j\omega e^{j\theta}z \rightarrow ( s\bm{I} + \omega \bm{J} ) \begin{pmatrix} \cos \theta & - \sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix}

また、複素数体の元は可換であるため、I\bm{I}J\bm{J}を用いて表現すれば、計算コストが低くなる。

(abba)(cddc)(xy)=(cddc)(abba)(xy)\begin{pmatrix} a & - b \\ b & a \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} c & - d \\ d & c \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} c & - d \\ d & c \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & - b \\ b & a \\ \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \\ \end{pmatrix}

同相・鏡相信号を用いた回転処理(回転行列の対角化)

回転行列は複素数成分の行列を用いて対角化することができる。ここでは2次元の場合について検討する。

U12(1j1j)\bm{U} \coloneqq \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & - j \\ 1 & j \\ \end{pmatrix}

として、

(cosθsinθsinθcosθ)=U(ejθ00ejθ)t ⁣U\begin{pmatrix} \cos \theta & - \sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \\ \end{pmatrix} =\bm{U} \begin{pmatrix} e^{j\theta} & 0 \\ 0 & e^{-j\theta} \\ \end{pmatrix} {}^t\!\bm{U}

主に扱うのはR2\mathbb{R}^2の信号であるが、回転の写像がある場合にはC2\mathbb{C}^2で考えると簡単になる事がある。

ここで、ユニタリ行列

U12(1j1j)\bm{U} \coloneqq \frac{1}{\sqrt{2}}\begin{pmatrix} 1 & - j \\ 1 & j \\ \end{pmatrix}

を考える。

いま、R2C2\mathbb{R}^2 \rightarrow \mathbb{C}^2の写像と制限して考えれば、この行列はC\mathbb{C}上に、元と、元の複素共役が射影される変換である。

(u1u2)=uR2\begin{pmatrix} u_1 \\ u_2 \\ \end{pmatrix} =\bm{u} \in \mathbb{R}^2
(upun)=upn=Uu=12(u1+ju2u1ju2)\begin{pmatrix} u_p \\ u_n \\ \end{pmatrix} = \bm{u_{pn}} = \bm{U} \bm{u} = \frac{1}{\sqrt{2}} \begin{pmatrix} u_1 + ju_2 \\ u_1 - ju_2 \\ \end{pmatrix}

このとき、upu_pu\bm{u}の正相成分、unu_nu\bm{u}の逆相成分と呼ぶ。

R2ufyR2Ut ⁣UC2upngypnC2\begin{CD} \mathbb{R}^2 \ni \bm{u} @>f>> \bm{y} \in \mathbb{R}^2\\ @VV\bm{U}V @AA{}^t\!\bm{U}A \\ \mathbb{C}^2 \ni \bm{u_{pn}} @>g>> \bm{y_{pn}} \in \mathbb{C}^2 \end{CD}

回転座標系上で動作する制御器の静止座標系での考察

2次元の回転行列は、実数成分の行列では対角化することができないが、複素数成分の行列を考える事で対角化可能である。 回転座標系上の制御器は次のようになる。

R2usR(θ)uF(s)yR(θ)ysR2Ut ⁣UC2upngypnC2\begin{CD} \mathbb{R}^2 \ni \bm{u_s} @>R(\theta)>> \bm{u} @>F(s)>> \bm{y} @>R(\theta)>> \bm{y_s} \in \mathbb{R}^2\\ @VV\bm{U}V @VVV @VVV @AA{}^t\!\bm{U}A \\ \mathbb{C}^2 \ni \bm{u_{pn}} @>g>> \bm{y_{pn}} \in \mathbb{C}^2 \end{CD}