ここではPMSMの電圧方程式について解説する。
準備中
簡単のために、まずは固定子のみの電気的特性を考察する。後に回転子込みの電気的特性を導く。
固定子の電圧方程式
ここでは固定子の電気的構造を考える。
v、i、ϕをそれぞれ電圧、電流、磁束として、抵抗とインダクタを直列に接続したR-L負荷の電圧方程式は次式となる。
v=Ri+sLi=Ri+sϕ 固定子では、3相巻線として3対のR-Lが、Y結線もしくはΔ結線で接続される。以後、簡単のためY結線とする。
主磁束をϕL、漏れ磁束をϕl、各々に対応するインダクタンスをL、lとする。このとき短絡する磁束を考慮する。
v=Ri+s(ϕL+ϕl)=Ri+s(L+l)i このときϕを鎖交磁束とし、固定子の電圧方程式は次式となる。
v⎝⎛vuvvvw⎠⎞=Ri+sϕ=R⎝⎛iuiviw⎠⎞+s⎝⎛ϕuϕvϕw⎠⎞(1) ⎝⎛ϕuϕvϕw⎠⎞ϕ=⎝⎛cos(0)(ϕLu+ϕlu)cos(3−2π)ϕLucos(32π)ϕLucos(32π)ϕLvcos(0)(ϕLv+ϕlv)cos(3−2π)ϕLvcos(3−2π)ϕLwcos(32π)ϕLwcos(0)(ϕLw+ϕlw)⎠⎞=⎝⎛ϕLu+ϕlu−21ϕLu−21ϕLu−21ϕLvϕLv+ϕlv−21ϕLv−21ϕLw−21ϕLwϕLw+ϕlw⎠⎞=⎝⎛Lu+lu−21Lu−21Lu−21LvLv+lv−21Lv−21Lw−21LwLw+lw⎠⎞⎝⎛iuiviw⎠⎞=⎝⎛LMMMLMMML⎠⎞⎝⎛iuiviw⎠⎞=Li v=Ri+sLi(2) 補足
- sLiは、dtd(Li)である事に注意する。
- 回転子の有無によりLの値が変化する。磁気経路内にある物体の透磁率に依存する。
透磁率は空気、珪素鋼板でそれぞれ1.25×10−6[H/m]、5.0×10−3[H/m]程度と異なる。
よってこのセクションのLは、以後出現する回転子を含むPMSMのモデルに含まれたLとは値が異なる事に注意する。
SPMSMの電圧方程式
SPMSMは回転子にリラクタンス(磁気抵抗)の変動が存在しないモータである。
合計の磁束ϕall,uvwとは、固定子反作用磁束ϕi,uvwと回転子の永久磁束により発生する磁束ϕm,uvwの和となる。
vuvwvuvwvuvw=Riuvw+sϕall,uvw=Riuvw+sϕi,uvw+sϕm,uvw=Riuvw+s⎝⎛LMMMLMMML⎠⎞iuvw+sΦ⎝⎛cos(θ)cos(θ+32π)cos(θ−32π)⎠⎞ IPMSMの電圧方程式
IPMSMは回転子にリラクタンス(磁気抵抗)の変動が存在するモータである。
回転子の形状の対称性から、リラクタンスの変動は2θの関数となる。
合計の磁束ϕall,uvwとは、固定子反作用磁束ϕi,uvwと回転子の永久磁束により発生する磁束ϕm,uvwの和となる。
vuvwvuvwvuvw=Riuvw+sϕall,uvw=Riuvw+sϕi,uvw+sϕm,uvw=Riuvw+s⎝⎛L(2θ)M(2θ)M(2θ)M(2θ)L(2θ)M(2θ)M(2θ)M(2θ)L(2θ)⎠⎞iuvw+sΦ⎝⎛cos(θ)cos(θ+32π)cos(θ−32π)⎠⎞ uvw軸の電圧方程式
uvw軸の電圧方程式は、
vuvwvuvw=Riuvw+sϕall=Riuvw+sϕi,uvw+sϕm,uvw となる。
αβ軸の電圧方程式
αβ軸上の電圧方程式は3相モデルに対して
S=32(10−2123−21−23) を作用させ、
(vαvβ)=vαβ=Svuvw (iαiβ)=iαβ=Siuvw (ϕαϕβ)=ϕαβ=Sϕuvw vαβ=Riαβ+sI(LiI+LmQ(θ))iαβ+sIu(θ)(ϕ0)(2) を得る。
γδ軸の電圧方程式
γδ軸上の電圧方程式は回転行列
R=(cosθsinθ−sinθcosθ) を作用させると、
vγδ=Riγδ+(sI+ωγJ)(LiI+LmQ(θγ))iγδ+(sI+ωγJ)u(θγ)(ϕ0)(3) を得る。
dq軸の電圧方程式
dq軸上の電圧方程式は
vdq=Ridq+(sI+ωJ)(Ld00Lq)idq+(sI+ωJ)(ϕ0)(4) を得る。